夏、仕事に不満を持つ青年が奉公先から「さすらい」の旅にでてしまう。しかし「どこへ?」、やりたい事に当てがあったわけじゃない。清水のせせらぎに導かれて小川に来ると美しい少女が水遊びをしていた。良いものが観られたありがとうと「小川への感謝」。少女の事を知りたい、でも彼女は既に誰かのものかも知れない。勝手な「疑い」が浮かんでくる。
「朝の挨拶」をしてみた。少女が挨拶を返してくれた。あぁ、とても嬉しい。月が美しいからと誘い出したものの何をどう話して良いやら、おろおろ。ポツポツと会話(の様なもの)をしているとポツポツと雨が降ってきて「雨が降ってきたわね。さよなら、わたし家に帰るわ」
うわぁ、なんて嬉しいんだ。「お休み」愛しいリュートよ、いつか僕が上手に奏でよう。
・・・
騒がしい、犬たちが騒いで居るぞ。角笛の音がする。「狩人」がやってきた。もじゃもじゃヒゲの野蛮な連中だ。
え、なんてことだ。彼女はあんな男が良いと言うのか。僕に小川で綺麗な花をくれたじゃないか、「しぼんだ花」をどうしたらいいのだろう。でも、いつか僕を選ぶべきだったと気がついてくれる「あの人は誠実だった」と。
「水車屋と小川」は語る。
19. Der Müller und der Bach | 水車職人と小川 |
(Der Müller) | (水車職人) |
Wo ein treues Herze | ある誠実な心が |
In Liebe vergeht, | 愛に消えると、 |
Da welken die Lilien | 百合の花はしおれてしまう、 |
Auf jedem Beet. | あらゆる花壇で。
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Da muß in die Wolken | また雲の中へと |
Der Vollmond gehn, | 満月も入っていくはず。 |
Damit seine Tränen | その涙を |
Die Menschen nicht sehn. | 誰かが見てしまわないように。
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Da halten die Englein | そして天使たちも |
Die Augen sich zu. | 目を閉じて、 |
Und Schluchzen und singen | すすり泣き、歌って |
Die Seele zur Ruh’. | 魂に安らぎを与えてくれるんだ。
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(Der Bach) | (小川) |
Und wenn sich die Liebe | そして愛が |
Dem Schmerz entringt, | 苦しみから解放されれば、 |
Ein Sternlein, ein neues, | 星が、新しい星が |
Am Himmel erblinkt. | 天に輝きます。
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Da springen drei Rosen, | その時には三つのバラが咲き出でます、 |
Halb rot und halb weiß. | 半ば紅く、半ば白く、 |
Die welken nicht wieder, | もはや枯れることのないバラが、 |
Aus Dornenreis. | いばらの枝の中から。
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Und die Engelein schneiden | そして天使たちも |
Die Flügel sich ab, | その翼を切り落として、 |
Und gehn alle Morgen | あらゆる朝に |
Zur Erde herab. | 地上へと降りて来るのです。
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(Der Müller) | (水車職人) |
Ach, Bächlein, liebes Bächlein, | ああ、小川よ、愛する小川よ、 |
Du meinst es so gut: | おまえはそんなにも親身に考えてくれる。 |
Ach, Bächlein, aber weißt du, | ああ、小川よ、知っているのか? |
Wie Liebe tut? | 愛が何をするのかを。
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Ach, unten, da unten, | ああ、底に、その川底に |
Die kühle Ruh’! | 冷たい安らぎが! |
Ach, Bächlein, liebes Bachlein, | ああ、小川よ、愛する小川よ、 |
So singe nur zu. | そうやってただひたむきに歌っておくれ。 |
そして「小川の子守歌」。
小川はやがて大海に注ぐ、青年よ家へお帰り。あなたの心を悩ませる悪い娘は近づかないようにしたから安心をし。満月が昇り霧が晴れると、上には空がなんて広々としている事でしょう。
午前6時からのNHK-FM「音楽の泉」は、シューベルトの連作歌曲「美しき水車小屋の娘」から。ウィルヘルム・ミューラーの詩、20曲から11曲をディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの録音で聴きます。ピアノ伴奏をイェルク・デムスした1968年の DEUTSCHE GRAMMOPHON盤。曲中にリュートが小道具として出てくる。美しい娘の身体を思わせるものであり、ギター伴奏で演奏される機会もあります。重々しいピアノよりも、イェルク・デムスの古いピアノを思わせる音色はふさわしいと思います。
- シューベルトの歌曲集“美しい水車屋の娘” -
「歌曲集“美しい水車屋の娘”から」 シューベルト作曲
(39分35秒)
・さすらい ・どこへ ・小川への感謝 ・うたがい
・朝のあいさつ ・涙の雨 ・休み ・かりゅうど
・しぼんだ花 ・水車屋と小川 ・小川のこもり歌
(バリトン)ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
(ピアノ)イェルク・デムス
<グラモフォン POCG-30171>via cgi4.nhk.or.jp