涙の乗車券でデビューしただけに、カーペンターズの門出は啼きに終わりました。1年がかりで作ったデビューアルバム「Offering(2年後の再発時の「涙の乗車券」)」は、お蔵入り。1970年、バート・バカラックとの「遙かなる影 Close to You」のヒットを待つことになります。この「Offering」のタイトルで発売されたLPレコードは中古相場では1万2,000円ほど。
それでも実際の人気と言ったら「遙かなる影」には及びません。
「Now & Then」がリリース当時から変わらない人気で、オリジナル盤を観る機会は多くありません。その為でしょうか、或いはオーディオ装置のチェックには「遙かなる影」の方が向いていると言うことでしょうか。カーペンターズは人気があると言っても、この1枚に尽くされているとも思えます。
さて「遙かなる影」で向かい風どころか、黙止されたまま終わらないで良くなったカーペンターズ。デビューアルバムが発売された1969年にA&Mレコードからはどのようなアーティストがアルバムをリリースしていたのでしょう。COLUMBIAやDECCA、CAPITOLと言ったレーベルにはデザイナーチームが居たので有名なアルバムジャケットはどれも優れていますが、A&Mレコードのアルバムデザインはユニークで面白い。中にはレコード会社を移籍してデザインが変わってしまったアーティストのアルバムもあります。
目をひくところとして、2枚のアルバムジャケットが「毒蜘蛛」と「ヘッドフォンをしたピンクの豚」。カーペンターズの「Offering」を挟んで同月期にリリースされたレコードです。
2008年6月28日に69歳で亡くなった、トム・ウィルクスのデザイン。ジョージ・ハリソンのバングラデシュ・コンサートのジャケットデザイン。それより、ビートルズの赤盤、青盤をデザインしたイラストレーター、デザイナーと言えば分かりやすいでしょうか。何かの機械?・・・たこ足配線にも思えますが、「タランチュラ」と言われてさっと見せられたぐらいだと間違ってしまいそうですね。
SP 4202 – Tarantula – Tarantula [1969]
- You
- Electric Guru
- T.V. Repairman
- Love Is For Peace
- Poison Dance
- Thoughts For Anne
- Peach Fuzz
- Red Herring
- Billy the Birdman
カーペンターズの「Offering」の規格番号は、SP-4205ですから3つ前のアルバム。そして SP-4210 として最初にA&Mレコードからリリースされていたのが、有名な「Ahead Rings Out – Blodwyn Pig」です。佐渡裕さんが最近クラシックのオーケストラで「タルカス」をエマーソン、レイク&パーマーばりにCD化しましたけれども、そのジェスロ・タルの初代ギタリストだったミック・エイブラハムが自分の理想の音楽として問うた自信作。ブラッドウィン・ピッグのレコードはブルース好きなら良く知っていますよね。
こんな2枚に挟まれて、A&Mレコードの新譜としてレコードショップに並んだのがカーペンターズのデビューだったのです。当時カーペンターズを買った人は、どういう印象でレコードを手にレジに向かったのでしょうね。
SP 4210 – Ahead Rings Out – Blodwyn Pig [1969]
- It’s Only Love/Dear Jill
- Walk On The Water
- The Modern Alchemist
- See My Way
- Summer Day
- The Change Song
- Backwash
- Ain’t Ya Coming Home?